第2章 王国の王子
命を受けた同日中に、クルツは王都を発った。
供は一人も居ない…これも宰相の謀略だ。
たった一人で蛮族の王に勝てる筈が無い…それは彼にも分かっている。
今の彼に最も必要なものは、共に戦ってくれる仲間。
蛮族の集落は、東の国境にある。
そこに向かう道すがら、仲間を…出来るだけ多く見つけなくてはならなかった。
森に沿った道を、クルツは馬に乗って進んで行く。
王国の自慢の一つ、大陸一大きな湖…そこに浮かぶ王都を見つめて、彼は手綱を強く握り締めた。
蛮族の王を討つ…俺に出来るのか?
それも一人でやれだと…宰相は、本当に俺が邪魔なんだな。
「いや…宰相だけじゃなかったな…」
…孤独なのは、王宮に居たって同じだろ…何不安がってんだ…
クルツの鼓動が、孤独感による恐怖で速くなる…我ながら情けない…と、彼はかぶりを振った。
嫌な考えに浸っていた彼は、前方をよく見ていなかった。
「──うわあああ!」
「待てゴラァ‼︎」
突如として耳に入った声に反応して顔を上げる。
「⁉︎」
王子の視界、前方の坂下、数十メートル先…
「蛮族か…!」
蛮族の男が、村人らしき少年を襲っている景があった。