第2章 王国の王子
(何故俺がこんな目に…)
国王陛下の前に跪く一人の青年…王国の王子・クルツは心の中で呟いた。
彼は、自身が生まれた国に必要とされていない。
その身に通う王家の血が、半分しかないという理由で…
他の王族にも、貴族にも、古い家臣にも、嫌われている。
だからだろう…
「クルツよ、其方に命じる。憎き蛮族の王を、討ち取ってくるのだ」
彼は、死刑宣告にも似た命令を、実の父から与えられたのだ。
王国の王は聡明な人だった。
しかし、生来体が弱く、人を頼り過ぎる嫌いがあった。
心からの信頼を置いているから、戦に関わる事は宰相に頼り切り。
そして宰相は、クルツを嫌っている者の一人。
彼に蛮族との戦いで命を落とさせた後で、真剣に蛮族と戦う策を練る…それが宰相の計画だった。
クルツが死ねば、彼の弟を次の王にする事が出来る…そうすれば、政権すらも宰相の思いのままとなる。
──そんな事の為に、俺は死ねない。
クルツは、叫びたい衝動を抑えた。
喚いても命令は覆らないし、逆うことも許されない…仮に逆らったとしても、宰相の都合の良い事にしかならない。
だから彼は、
「謹んで拝命致します。必ずや、蛮族の王を討ち取り、その首を陛下に献上致します」
蛮族の王に勝たなければならないのだ。