第3章 使者の娘
(……遅いな)
来客があって出て行ったノインが、中々部屋に戻らない。
どうしても、ここに来る前に遭った蛮族を思い出してしまい、王子の中には不安が募っていた。
「ノイン遅いなぁ…ずっと話してるのかな」
「何か問題でもあったのだろうか…」
テートとモートルも、不安そうな表情を浮かべている。
「──!まさか、攫われたのでは…⁉︎」
「いや…気配はある」
「そ、そうですか…。流石は殿下、そんな事までお分かりになるんですね」
クルツは、他人より人の気配に敏感である…王宮で身に付けた技能の一つであった。
「盗聴する魔法があるんやけど…使おうか?」
魔法使いの案に騎士が答えに迷って、王子が「やめとけ」と言った…
その直後、部屋にノインが戻って来た。
怪我は無く、揉めた様子も無い…が、額に汗を滲ませている。
「何かあったか」
クルツが聞くと、ノインの表情は深刻そうなものに変わった。
「ごめんなさい、僕…!王子様が居るって…話してしまって…」
「!」
「ここに居ないなら蛮族の集落に行って探すって言われて、思わず…」
「相手は、殿下がここに居ると知っていたのか⁉︎」
モートルの問いに、ノインは頷き肯定する。