第3章 使者の娘
(は…嵌められた!)
暫し絶句するノイン…しかし、黙り続けているわけにも行かない。
「あ、あなたは…誰なんですか…⁉︎」
絞り出すように、ノインは少女に問った。
少女は答える。
「──私は、シーカ。王都から来ました」
「王都……どうして、王子様に会いたいんですか…?」
「それは本人に言います」
少女…シーカは目を逸らさない…だからノインも逸らさず、その茶色の瞳を見返す。
「…あなたは…何か、武器とか…持っていますか?」
「短剣を二本」
シーカは、肩から提げていた鞄に手を入れると、その中から納刀の短剣を二本、取り出して見せた。
護身用と思われる、意匠の違う二本の短剣……シーカの手にあるそれを見ながら、ノインは真剣な表情で、彼女に言った。
「それを、僕に預けてくれるなら…中に入って下さい」
シーカは、少しの躊躇いも見せず、ノインに自身の武器を手渡した。
それを確と受け取って、ノインは彼女を家の中に入れる。
しかし、いきなり王子様に会わせる事は出来ない。
「王子様に、貴女と会って貰えるか訊いてみます。だから、ここで待っていて下さい」
シーカは、ノインの言葉にコクと頷く。
そしてノインは、王子と仲間の待つ部屋へと戻って行った。