第3章 使者の娘
ノインは、その相手には待って貰っていると話した。
「落ち着いて考えてみれば、宰相の差し金かも知れないし…」
「怪しいよね」
「殿下に会わせるのは、危険ではないか⁉︎」
「…どんな奴だった?」
クルツは、三人よりは落ち着いた様子で、冷静に問う。
貴族や騎士なら、服や装飾、雰囲気などで分かる筈だ…と。
「えっと、僕らと同い年くらいの女の人です。服装は普通で…王都から来たと言ってました」
「じゃあ平民?」
「いや、平民なら俺を追う理由がない」
魔法使いの言葉を否定して、王子は再び思案する。
(平民になりすましてるとしたら、目的は何だ…?)
無言になった王子様に、ノインは思い出したように付け加えた。
「彼女は、シーカと名乗ってました」
「シーカ…」
名前に聞き覚えは、無い。
「テート、どうかしたのか?」
モートルの声にクルツが顔を向けると、テートは何か考えてるのか腕を組んで首を傾げていた。
「その名前…どこかで聞いたような…気がするんだけど」
思い出せないらしい。
…このまま考えていても時間の無駄である。
そう判断した王子は、剣士に伝えた。
「ノイン、そいつを連れて来てくれ」
「!い、良いんですか?」
「ああ。…仮に刺客だったとしても、蛮族じゃねえならまず勝てる」
クルツには、それぐらいの技量はあるという自負があった。
そして…「今は一人ではない」という安心感もあった。
ノインは、少し躊躇う様子を見せながらも、今も待っているシーカを連れて来るべく、再び部屋から出て行った。