第3章 使者の娘
「蛮族の集落に行くなんて危ないですよ‼︎」
「目的の為なら、構いません」
ノインは口をパクパクと動かす…驚き過ぎて上手く言葉が紡げない。
少女が本気なら、たった一人で蛮族の集落に行かせてしまう事になる…初対面の他人とはいえ、黙って行かせるわけにはいかない。
でも、王子の事を話すわけにも…ノインは混乱しそうな頭を回して、少女を止める方法を考える。
しかし、異常に異常が重なったこの状況で、そう簡単に良策を思いつく筈も無い。
そして、追い打ちとばかりに…少女は再び歩き出した。
「では…私はこれで」
「あ…まっ」
「さようなら」
少女の放った別れの一言が、ノインの思考を停止させた。
「待っ…こっ…」
“彼女を止めなければならない”…思考が止まったノインは、その為だけに動いた。
「ここに居ます‼︎」
言わないと決めていた言葉を、言ってしまった。
スタスタと、少女はノインの目の前まで戻って来る。
「居るなら会わせて下さい」
前のめりに少女から迫られ、ノインは目を白黒させた。
驚いた様子が全くない少女…ノインは漸く気付いた。
少女は自分にカマをかけていたのだ、と。