第2章 王国の王子
クルツの瞳に、涙が浮かんだ…馬屋の屋根が光を遮っている為、三人には気付かれていない。
…生まれた時から、自分は不要な人間だと思っていた。
自分に本当の味方は、一人も居ないと…
「お前らの覚悟が確かなら…頼む。俺と共に来てくれ」
涙を拭って願う王子の言葉に、三人は嬉しそうに、少しだけ誇らしげに、笑顔で答えた。
「はい!」
「王子様は私達が守ります!」
「お任せ下さい!」
この日…孤独な王子には仲間と呼べる人が出来た。
まだ信頼なんて言葉は言えないが…初めて他人に、心からの感謝を抱く事が出来たのだ。
あの後、王子はノインの家に招かれた。勿論、テートとモートルも一緒である。
「第一王子のクルツだ」
人差し指にある指輪…刻まれた王国の紋章に触れながら、クルツは改めて三人に名乗った。
「じゃあ僕ももう一度…えっと、ノインです。この村の剣士だけど…本当は、ずっと王宮で働きたいと思ってました」
「やめておいた方が身の為だ。ロクな所じゃないからな」
ノインは何と答えて良いのか分からず、曖昧に頷くだけに留めた。
そんなノインを横目で見た後、魔法使いは王子に目線を移して挙手をする。
「次は、私が自己紹介するね!魔法使いのテートです。得意な魔法は物体浮遊!」
王子が「よろしく」と返す前に、ノインは慌ててテートに言った。
「テート、敬語!敬語じゃなくなってるよ」
「あ、ごめんなさい!」
「…別に構わない。喋りやすいように喋ってくれ」
礼儀をどうこう言うつもりは、王子には微塵もなかった。