第2章 王国の王子
「自分は、先日騎士になりましたモートルと申します!訓練学校時に一度、殿下のご尊顔は拝させて頂いており─」
モートルが長い挨拶を始めてしまい、ノインとテートは心配そうに王子を見る。
しかしクルツは、嫌な顔一つ見せず…モートルの言葉を真剣に聞いていた。
「モートル、すごく嬉しそうだね」
その様子を見てテートと笑い合いながらも…ノインの頭の中には、蛮族討伐の文字が並んでいた。
共に行くと言った事を後悔しているわけではないが、改めて考えるとどうしても、緊張と不安を感じてしまう。
先ず、何をすれば良いだろうか…ノインは少しでも作戦を練ろうと、自身の顎に手を当てた。
丁度、その時であった。
「──ごめんください」
誰かが、ノインの家を訪ねたのは。
「!」
テートとモートルが、明らかに警戒を始める。
「あ、僕が出るので…ここに居て下さい」
ノインはそう言って立ち上がると、部屋を後にして扉を閉めた。
そのまま玄関に向かい、一応手の届く位置に剣を置いておき、玄関の扉を開けた。
「…こんばんは。突然お尋ねして、すみません」
「こ、こんばんは…」
扉の向こうに居たのは、ノイン達と同い年くらいに見える、一人の少女だった。
先程までとは違う緊張がノインを襲う…家族や親しいテート意外の女性に、慣れていないのだ。
初めて見るほどに美しい少女が相手では尚の事。
「ええっと…ウチに何か、用ですか?」
勇気を出して訊ねるが、少女は何も答えない。
ノインは対応に困り、額に汗を滲ませる。
少しの間をおいて…少女は、ノインの目を見つめてこう言った。
「ここに、クルツ王子殿下は居ますか?」