第12章 膨らんだ気持ち
「提案なんだけど、ここじゃなくて別の場所にしない?
ここだと暴れられないし、何より人に迷惑がかかるから」
こんな誘いに乗るかな?
相手は宿屋まで来た賞金首狩り。
「嫌に決まってるでしょ?
あんた、バカなの?
それとも幸せ者?
今までどんな楽しい人生を送って来たのかしらね」
と、女性が溜め息を吐く。
どうしよう。
このままの状態なのはまずい。
「じゃあ、始めようかしら?
世の中の恐ろしさをあんたに教えてあげるわ」
ニヤリ、と怪しく笑った。
「...」
チッ、良い加減邪魔だよぃ、こいつ。
チラリと横を見れば、ニコリと笑う。
何が目的なのかずっと俺の腕に抱き着いている。
それをされて嬉しいのは、熾天使だけだよぃ。
さっきの熾天使何か様子がおかしかったし、早く追い掛けてぇのに。
「ねぇ、ダメ...?
良いでしょう...?」
「断るよぃ」
これで何度目だ、このやり取り。
「良いじゃない。
ね?1回だけ」
執拗に休憩所に誘って来る。
俺で溜まった欲を満たしたいなら、他の奴のところに行けよぃ。
「さっきの女の子が居るから?
だからダメなの?ねぇ?」
「あぁ、そうだ」
「あの子なら大丈夫よ。
1回ぐらいバレないわ」
付き合ってはねぇけど、否定するのも面倒だし別に良いか。
「煩ぇよぃ。
俺は好みじゃねぇし、溜まってねぇ。
あいつ以外とヤる気はねぇから他を当たれよぃ」
腕を振りほどくと、足早に去った。
「ちぇ...つまんないの」