第11章 宿屋
「こちらの部屋をご自由にお使いください」
宿屋の中の1番端、そして他の部屋から少し離れた部屋に案内される。
「はい。
ありがとうございます」
「いえ、ではごゆっくりと...」
女将さんが部屋をあとにする。
「女将さん、良い人だね」
「あぁ」
「マルコ、もしここに王国の人が来たなら代金を置いて即出よう」
「言われなくてもそのつもりだよぃ」
部屋は、2人で泊まるには少し狭いものだった。
元々1人用の部屋なのだろうか。
布団は1つしかない。
「俺はシャワーを浴びて来るよぃ」
「分かった。
行ってらっしゃい」
私は船でお風呂を借りたけど、マルコがお風呂を借りるところを見てない。
ずっと入らなかったのかな。
なんで...?
「マルコはお風呂借りなかったの?」
「風呂ん中ってことは能力が一切使えねぇ。
あいつらを信用してない訳じゃねぇが、俺の身は俺が守るよぃ」
「そっか」
マルコなら能力を使わなくても十分戦えると思ったけどね。
マルコがお風呂に入ったのを確認すると、畳に寝転んだ。
ファサ...と髪が舞う。
腕を伸ばし、真上にある電気を掴もうとする。
当然掴める筈もなく、その手は虚しく空を切る。
「私が死んでも、悲しんでくれる人が居る...」
それがこんなに嬉しいことだとは思わなかった。
「マルコと離れたくないな...」
そう呟くと、目を閉じた。