第11章 宿屋
「店は適当で良いか?」
「大丈夫」
手近にあった店に入った。
「2名だ」
「かしこまりました。
お好きな席へどうぞ」
奥の席に腰を下ろした。
カウンターになっていて、私はマルコの隣に座る。
「これとこれを頼む。
熾天使は?」
「あ、じゃあ私もそれで」
あまり来ないカウンター式のお店が珍しくてキョロキョロしていた。
「熾天使」
「何?」
「今夜は宿に泊まるよぃ」
「え、船に向かわないの?」
「そんなにすぐ動いたら疲れるだろ?
別に急ぎでもねぇし、ゆっくりで良いだろ。
それに、この島を出たらもう船まで休む場所ないんだからよぃ」
「あ、そっか」
この島を出ればずっと飛びっぱなし。
能力の使いっぱなしになるんだ。
病み上がりの身体を気遣ってくれて...。
嬉しい。
優し気遣いに頬が緩む。
「ニヤけてんじゃねぇよぃ。
別に心配するのはおかしなことじゃねぇだろ?」
「ありがとう、マルコ」
普段とは逆に、マルコの頭を撫でる。
...ここが店内だということも忘れて。
「...」
頬を赤く染め、目を逸らしたマルコ。
可愛い。
私の行動に照れてくれるのが嬉しい。
また、胸がキュンとなる。
ずっとマルコを見ていたい。
マルコと一緒に居たい。
「マルコ」
「なんだよぃ」
「ずっと、一緒に居てね」
「当然だよぃ。
それ、告白みたいだね」
「え?あ、ちがっ...」
「分かってる。
からかっただけだぃ」
マルコかおかしそうに笑う。