第9章 笑顔
「…熾天使は治るのかよぃ?
意気込みは分かったから、今のところの確率を教えてくれ」
俺が聞きたいのは、治してみせるという言葉じゃなくて、治る確率だ。
「……治る確率は…正直、50%だ」
半分…か。
「でも…」
「でも、なんだよぃ」
「後遺症とかがなく100%元の状態に戻る確率は……20%にも満たない…」
「嘘…だろ…?」
「本当なんだ。
それだけ脳や身体に影響を及ぼすんだ…」
「そうかよぃ…。
話してくれてありがとうな」
「俺は医者だ!
説明ぐらいちゃんとやらなきゃ…辛くても…!」
「おい、なんでお前ェが泣くんだよぃ」
会って間もない熾天使の為に涙を流す船医。
「だって…だって…。
治るか分かんねーのに…!」
「お前が不安になってどうするんだよぃ。
治してみせるんだろ?」
「…あぁ…!」
なんで俺が励ましてるんだか。
不思議な連中だよぃ。
コンコンコン。
「入っても良いか?」
「おう、良いぞー、サンジ」
両手に皿を抱えた黒足が入って来る。
なんとも旨そうな良い香りだ。
「チョッパーの分のメシだ」
「ありがとうー、サンジー」
「ほら、お前も」
「俺も…良いのかよぃ?」
「当たり前だ。
この船に居てルフィが認めている限りは、俺は誰にでもメシを作る。
それがコックさ」
「…すまねェ」
「別に毒なんか入っちゃいねェから、安心しろよ。
その顔色じゃしばらくまともにメシ食ってねェだろ。
チョッパー、彼女が目ェ覚したら呼んでくれ。
俺が料理を作ってやる」
「分かった!」
そう言って医務室を出て行く。