第8章 敵襲
「熾天使っ」
「これ、マルコ。
だからノックをせぃ」
「煩せェよぃ」
「全くじゃな…」
「どうなんだ?熾天使の様子は」
「うむ…厄介じゃな」
「は…?」
厄介…?
厄介ってなんだよぃ。
「治んのか?熾天使は」
ジジイの首元を掴む。
「落ち着け、マルコや。
まずは説明を聞け」
「……悪ぃ」
「彼女の身体を痛めつけてるのは、頬や肩から入ったこの毒じゃな」
「毒…?」
ピクリと眉間にシワが寄る。
「そうじゃ、解析したところこいつは麻痺毒じゃ。
それがナツキの身体の自由を奪っている。
じゃがこの毒は動きを封じるだけであって、意識までは飛ばさんのじゃよ」
「それって…どういう…」
「毒の他にもう1つ、厄介なものが入り込んでおる。
そいつは体内に入り込むと、1日でその姿を現わす。
今は…発症から2日目といったところじゃな。
体内に入り込んで、内側から破壊してゆくのじゃ。
そして7日後、命をも蝕むじゃろう」
「!
治療は…出来ねェのか?」
拳を強く握り、感情を堪える。
「…出来る。
幸い不治の病とは違い、治療法はある」
「なら…!」
「じゃが残念なことに、ワシの力ではどうにもならんわい」
「は…?」
「ワシの力では治療出来んのじゃよ…悔しいがの」
「なら…他に誰なら…出来るんだよぃ」
「少なくともこの船にはそんな医者おらんわい。
船を出て医者を探す他なかろう。
何せ次の島に上陸するのは2週間後、確実に間に合わん」
「くそ…!」
握りしめていた拳が、力のあまり爪が食い込み、血が滲んだ。