第8章 敵襲
「っ…」
視界がグラリと歪んだ。
「お、効いて来たナ」
「な…にを…」
手脚が痺れる。
呼吸が上がる。
「フハ、そいつは即効性の麻痺毒ダ。
さっきの短刀の刃に塗っておいタ」
「くっ…ぅ…」
脚に力が入らなくなり、床に膝をつく。
「どうダ?
毒が身体を巡る感覚ハ。
なかなか出来ない経験だロ」
「っ…逃げ…て」
後ろで腰を抜かすクルーに声をかける。
「で、でもっ…」
「あなたが…敵う相手ではないでしょう…?
それなら…逃げて…。
逃げて、誰かに知らせて…」
「お荷物が居ると大変だナ。
庇いながらじゃ力が出せるまイ。
さぁ…大人しくしてたら、楽に捕らえてやるヨ」
海楼石の錠を持って近づく男。
あの手錠をつけられては、おしまいだ。
一切の抵抗が出来なくなる。
といってもこの状態では似たようなものだけど…。
「くたばレ」
気絶させようと振り上げられた金棒を見上げる。
逃げるでも、叫ぶでもなく、ただ黙って見上げた。
そして…。
「そう簡単に…っ、やられてやる…もんか…」
動かぬ右腕を酷使し、炎を出す。
一か八か、それで金棒を受け止める。
「小賢しイ」
「っきゃ……ぅぐっ…」
1度防げたが、その後に押す力を強められ、甲板の端まで吹っ飛ばされてしまう。
壁に背中を打ち付けると、そのまま前に倒れた。
強運か悪運か、ギリギリ意識を保っている。
「っ…」
しかし、指1本すらも動かすことが出来ない。
毒が回ったか…叩きのめされ身体が限界か。
どちらにしろ、この状況は変わらない。
ジリジリと近寄って来る男。
私もここまでかな…。