第4章 名前
分担して効率良くお皿を洗う。
「なぁ、ナツキ」
「なぁに?」
「お前は親とか…居るのか…?」
エースの問いに、お皿を洗っていた手が止まる。
2人しか居ないキッチンがシン…と静まり帰った。
「あっ、悪い!
言いたくないなら良いんだ!
俺も変なこと聞いちまった」
「ううん、平気。
…産んでくれた人や、孕ませた人は居る。
でもその人達のことは親だと思ってないよ。
私、生まれたと同時に捨てられてるんだ」
「そう…か」
「だからと言って恨んでないけどね。
その人達に捨てられたから今の私が居て、皆とこうして出会えてる訳だから。
本当に恨んではないよ」
急にどうしたの、と尋ねる。
「…俺の親はさ…」
「うん」
「母さんは俺を産んだと同時に命を落としちまって、父親は俺が生まれる前に死んじまった。
犯罪者だったんだよ、父親は」
「そっか」
「犯罪者な父親のことはすげー憎んだけど、弟や親父の言葉を聞いて救われた。
だから別に今は気にしてねェんだ」
「エースも辛かったんだね」
と、眉間にシワを寄せたエースの頭を撫でる。
何度も何度も、優しく。
「また良ければさ、ナツキの話してくれよ」
「私の?」
「同年代なんて滅多に居ないし。
それに、ナツキと話してると楽しんだ」
「分かった。
その代わり、エースのことも教えてね?」
「おう、もちろんだぜ。
それより今はマルコが心配してるだろうから、部屋に戻ってやれよ?」
「えー…」