第3章 安心
「そんな暗い顔しないでよ、マルコ。
暗くさせたくて言ったんじゃないの」
「全く…これじゃどっちが歳上か分かったもんじゃないねぃ」
「それにマルコも言ってたじゃない。
“ 熾天使 ” って。
そうよ、私は熾天使よ。
だからちょっとやそっとのことじゃ死なないわ。
悪運だけは強いの」
そう笑う彼女の表情はどこか陰りが見えた気がした。
心配するだけ野暮ってことか。
「分かったよぃ。
それは自分の身は自分で守れるってことで良いんだな?」
「当然」
「じゃあ文句はねェよぃ。
好きにしろ」
「そのつもりよ」
いつの間にか肩を並べて歩き、目的の場所まで辿り着いた。
「ちょっと中の様子見て来るから、ここで待ってろよぃ」
「はーい」
楽しそうに笑う彼女に、先程の陰りは見当たらなかった。
「熾天使、中に入って良いよぃ」
「はーい」
マルコの声に、目の前のドアを開ける。
ムワッと広がる熱気。
そして…。
「え、エース⁉︎」
「お?
ナツキ、お前も風呂か?」
「な、なんで裸⁉︎」
「裸も何も下半身は服着てるだろ?」
上半身裸のエース。
さっきの宴までは素肌にだったけど、服着てたのに…!
目のやり場に困り、俯く。
人と関わらないようにしてたから、女の人の裸はもちろんのこと男の人の裸になんかもっと免疫がない。