第15章 釣りと魚と好き嫌い
色々な話をつまみに、お酒が進む。
「ねぇ、エース」
「ん?」
頬が色づき、普段は見せないような色香を放つナツキ。
「甘えるってどうしたら良いの...?」
「は?」
弱々しい声で尋ねられ、酒を煽っていた手が止まる。
「マルコに...甘えろって言われたんだけど、甘え方が分からなくて...」
生まれてから、人に甘えることを我慢していた。
1人で全てなんとかしなくちゃいけなかった。
親代わりは居ても、ワガママは言えなかった。
「んー...俺はマルコじゃねぇからマルコのして欲しいことは分かんねーけど...」
ポリポリと気まずそうに後頭部を掻きながら口を開いた。
「俺なら、好きな奴からならなんでも嬉しいぜ。
ワガママでも、甘えでも。
簡単なことを頼むことから始めるのはどうだ?」
ニカッと白い歯を見せた。
「頼む...か。
エースはさ...その......」
「ん?」
「その......か...か、か、カノジョ......に甘えて欲しいと思う?」
“ 彼女 ”
自分でそう言うのが恥ずかしく、何度も噛んでしまう。
「もちろんだ!
頼られて嫌な男は居ねーっての」
「そっか...なら良かった...」
安心して、またグラスを傾ける。
やっぱり1人で考えるよりずっと良い。
自分では考えつかなかったことを教えてくれる。