第15章 釣りと魚と好き嫌い
「いやいや、分からねぇぞ。
ナツキちゃん綺麗だし強いししっかりしてるし、モテるぞ」
興味ねェ、と言うようにジョッキを傾けた。
「構ってやらねぇと寂しくて他の男のとこ行くぞ」
「あいつはそんなことしねェよぃ」
「変なとこで自信満々だな」
ナツキの態度を見てれば分かる。
他の奴にも気を許してはいるが、甘えるのは俺にだけ。
「そういえばナツキちゃんは?
部屋に戻ったのか?」
「あぁ」
頷いたところでバタバタと騒がしい足音がした。
「サッチ!酒くれ!」
勢い良く食堂に転がって来たのはエースだった。
「なんの酒が欲しい」
「とりあえず量が多いやつ!」
「はいよ」
「あ、あと甘い酒くれ」
「エース甘い酒好きなのか?
ほらよ」
「サンキュ!
俺じゃなくてナツキが好きだと思ってよ!
じゃーな!」
酒を抱えて走って行く。
「......」
「...な、言ったろ。
モテるって」
「勘弁してくれよぃ...」
「歳が近い奴の方が話が合う時もあるしな」
不安を煽ってくれるな。
確かに若ェ者同士の方が話は合うかもしれねェ。
「このままじゃエースに全部持ってかれちまうぞ。
頑張んなさいよ、オジサン」
「へーへー」
「あ。もしかして枯れてもう頑張れないとか?」
思いついたように言うサッチに思わず拳を握った。
「殴って良いかよぃ」
「わ、待てマルコ!話せば分かる!」
「安心しろ、すぐに楽にしてやるよぃ」
「俺死んじゃうじゃん!」