第15章 釣りと魚と好き嫌い
「そんじゃ餌を...」
「や、やだ...」
箱の中のそれと睨めっこし、涙目で首を横に振る。
「ほんとに、お願い...」
「別に噛む訳じゃねーし、大丈夫だって!な?」
そういう問題じゃないのよ!
「お、釣りか?」
「マルコ!」
突如現れた救世主マルコの胸に飛び込んだ。
「うぉ、どうしたんだよぃ、ナツキ」
「虫嫌い...」
その胸の中で泣きじゃくるナツキを見て、一瞬驚いた顔をしたがすぐに優しい顔に戻り頭を撫でるマルコ。
「なんだ、嫌いだったのか。
なんか悪かったな」
少しバツが悪そうな顔をしたエースが餌箱からソレを1匹取り出し、プチリと生きたまま針で貫いた。
「っっ...」
その光景に絶句し、少し上げた顔はまたマルコの胸に逆戻りする。
「エース、少しは気遣ってやれよぃ。
泣いてんだろうが」
「だってよ...。
あ、それよりマルコもやるか?釣り」
「......虫に触ったらマルコの近くに行きたくない」
「やれやれ。
俺は遠慮するよぃ。
ナツキに避けられたくねぇからな」
「おう、分かった」
「とりあえず部屋に戻るか?
そこで落ち着けよぃ」
「わ、分かった」
近くにあった温もりが離れていく。
「あ、や...」
「ん?」
「なんで離れるの?」
「離れなきゃ移動出来ねぇだろうよぃ」
「......抱っこ」
「は?」
「抱っこ、してよ」
身体からマルコの温もりが離れるのが寂しいと思った。
「文句は言うなよぃ」
「うん」