第3章 安心
マルコは自身の部屋へ戻ると、躊躇いなくベッドにナツキを寝かせた。
起こさないよう優しく布団を掛ける。
「手荒い真似してすまなかったねぃ。
でも、そうしないと止められなかったんだよぃ」
親父や赤髪と同じように、持続させられる覇気。
被害は増え続ける1方だ。
あれ以上被害が増えなくて良かった。
…今頃医務室は気絶患者で賑わっているだろうが。
「…本でも読みながら、1人酒するかよぃ」
きっと宴はお開きだ。
先程の宴ではほとんどと言って良い程酒が飲めなかった。
飲まなかったのもあるが。
最近自分の時間もあまり取れてなかったので、良い機会だろう。
ちょうど眠る場所もないし、読書するか。
机のところの小さな明かりだけ灯し、読書に勤しむ。
ペラリというページをめくる音と、酒を飲む音だけが静かな部屋に響いた。
「ん……」
ふと、後ろから声が聞こえた。
その時まで、部屋に人が居ることを忘れてしまっていた。
振り返ると、熾天使がボーッとした様子でこちらを見ていた。
「起きたかぃ」
「ん…」
「気分はどうだ?」
「大丈夫…」
「水、飲むかぃ?」
「ん、飲む…」
「持って来るから待ってろぃ」
「ん…」
寝起きなせいか、呂律の回っていないくぐもった声が返って来る。
水を取りに行く為に部屋を出ると、キッチンでサッチと会った。
「なんだ、マルコ。
1人酒か?」
「そんなところだよぃ。
それより水貰ってく」
「あぁ。
ナツキちゃん、大丈夫そうか?」
「あいつは問題ないよぃ」
「そうか、なら良いんだけど。
俺らも気にしてないから、あんまり気にしないよう言っといてくれよ」
「あぁ」