第3章 安心
宴が始まり、船は一層騒がしくなる。
エースはいつもの如く食い散らかし、熾天使は親父の隣でチマチマ酒を飲んでる。
どうやら親父にだけは懐いたようだ。
親父の隣で飲みながら、時折頭を撫でて貰っている。
その表情はうっとりしたような、幸せそうな笑みだった。
「おーい!ナツキ!」
「エースくん」
「くんは止せよ!なんか恥じイ」
「エース」
「ん?」
「呼んだだけ。
どうしたの?」
「おう、実はな」
同年代のエースとも打ち解けつつあるみたいだ。
エースのコミュニケーション能力のお陰か、元来の人柄か。
「タコ食うか?タコ!」
ニッ、と満面の笑顔。
「タコ?」
「おう、ほら、タコ!」
にゅっ、と目の前に出されたのは生きた本物のタコ。
8本の足がウネウネと動き、今にもナツキに触れそうだった。
「いっ……」
「い?
要らねーのか?美味いのに」
「嫌ーっ」
「「「ッッ」」」
あまりの衝撃に思わず、無意識に覇気を使ってしまった。
バタバタと周りに居た家族達が倒れていく。
「おいおい、まじかよ…。
ナツキちゃん…」
「おい熾天使!
覇王色を止めろよぃ!被害が増える」
収まることのない覇気と、被害。
当然宴どころではなく、気絶する人が増える1方だ。
「む、むり…制御出来な……」
「チッ……悪く思うなよぃ」
「あッッ………」
戸惑い続けるナツキの背後に回ると、素早く手刀を繰り出したマルコ。
それによりナツキの意識が途切れ、覇気も収まった。
力なく前のめりに倒れるナツキの身体を抱き抱えると、自分の部屋へと連れて行った。