第13章 能力
「私の治療は主に2種類。
1つ目は、対象者の外傷を回復させるもの。
2つ目は、自分と相手との等価交換。
主に使うのは1つ目で、私の体力を大幅に削ることもない。
2つ目は自分を犠牲にすることで可能になる治療。
荒治療だし、自分の体力も大幅に削られるから普段は滅多にしない」
「なんで...それを今使ったんだよぃ」
マルコの声音は固くて、低い。
「だって、やって貰ってばかりは嫌だったから」
「良いか、ナツキ、よく聞けよぃ」
更に声色が下がる。
「2度と、自分を犠牲にするような真似すんじゃねぇよぃ」
顔を見なくても分かる。
「...ごめんなさい」
凄く、怒ってる。
「自分の身体はもっと大事にしろよぃ。
俺が言いたいのはそれだけだ。
分かったか?」
「...うん」
「なら良いよぃ。
船まで少し飛ばすから、しっかり捕まれ」
「分かった」
ギュ、と強く腕を回せばマルコはさっきよりも飛行速度を上げた。
「マルコ」
「ん?」
「優しいね」
「そうは思わねぇけど…」
誰かに叱られるのなんて、久しぶりだった。
「私ね、捨て子なの」
自分の過去を話すのに、すんなりと口が回る。
「何も出来なくて死んでいくだけだった私を、拾ってくれた人が居て。
育ててくれた。
きちんと遊んでくれたし、叱ってくれた。
私に戦闘術を教えてくれたのもその人なんだよ?
だから、マルコと少し似てて、なんか思い出しちゃった」
「そうか」