第12章 膨らんだ気持ち
女と別れ、宿屋に戻る。
熾天使が何を隠してるのか、きっちり吐かせねぇと俺が安心出来ねぇよぃ。
宿屋の暖簾をくぐり、部屋へと向かう途中変な奴達とすれ違った。
「...チッ、ヤんなら別の場所でやれよぃ」
男達から香るのは、精液の匂い。
嫌でも嗅ぎなれた、独特な匂い。
「気分が悪ぃ」
早く熾天使の顔が見たくて、急いで部屋の扉を開けた。
「っ...」
扉を開けた瞬間、ムワッとさっきの青臭い匂いが鼻を刺激する。
部屋を間違えたか?
そう思って1度扉を確認してみるも、間違ってはいない。
眉間に深くシワが刻まれた。
「熾天使?」
空き部屋を使ってヤったってこともある。
なのになんで、俺の心臓はこんなに煩ぇんだよぃ。
なんでこんなに嫌な想像ばかり出来ちまうんだよぃ。
「クソ...」
ギリ、と拳を握れば、その痛みからなんとか平常心が戻って来た。
「熾天使?
おい、居るのかよぃ」
なんの本能からか、1番青臭い匂いが漂って来るところに近づいた。
こんなところに居る筈なんてねぇのに。
「っ!
お、おい、熾天使!」
部屋の奥。
白い布が不自然にかぶせられ、そこがモッコリと膨らんでいた。
その布を急いで取り除けば、熾天使の姿が見えた。
「おいっ、熾天使っ」
髪は乱れ、服なんて着てなくて。
拘束されていたであろう手脚にはくっきりと手形が残っていて。
頬には殴られたような痕があり、背中は畳と擦れたのか擦り傷だらけだった。
そして、畳に散らばる赤い鮮血。
熾天使が、処女を喪失したことを示すそれ。
例えマルコでも、目を背けたくなるような状態だった。