第4章 初めての感情
聞けば夢芽ちゃんは、こういうアニメを見るのは初めてだという。
それなのに、たった1つのアニメの、しかも1話目にして涙が流れたというのだから、この進撃の巨人という作品は本当にすごいとしか言いようがない。
そして、そんな作品に携われていることがとても幸せだと思う。
と言うと、夢芽ちゃんは「ゆうきさんがすごいんですよ」と言ってくれたが、俺はそう思っていない。
もちろん全力で取り組んでいるけれど、現場ではほかの方々に圧倒されてばかりだ。エレンに対してだって、もっと良く演じてあげられたら、と思うことは何度もある。
泣き止んで少し落ち着きを取り戻した夢芽ちゃんに、あったかい紅茶を淹れてあげた。
「今日はもう遅いし、それ飲んだら寝よう?」
「はい、そうします。ありがとうございます。」
よしよし、と頭を撫でて、そのまま肩を抱き、口を開いた。
「夢芽ちゃんはさ、どうして進撃見ようと思ったの?」
「えー…っと、」
素朴な疑問だった。
確かに素晴らしい作品だけど、アニメ入門にしてはやっぱり重たすぎるんじゃないか。
「ゆうきさんが声優さんであることを知った作品が、これだったから…です。」
「というと?」
「昨日、勝手に本をみちゃった話をしたじゃないですか。それが、進撃の巨人、だったんです。」
「あ、それ進撃の台本だったんだ。」
えっ、と驚いてこちらを見る夢芽ちゃん。
「あれ、台本だったんですか?!」
「え、そうだよ?」