第4章 初めての感情
「おー、どうしたどうした」
よしよし、と夢芽ちゃんを腕に抱きながら背中をさすった。
「わたしっ…、しらなかった……っ」
ここで俺は気が付いた。
テレビの中で、エレンが叫んでいることに。
「進撃見てたんだ。怖くなっちゃったの?」
巨人は気持ち悪いし血は飛ぶし、泣きたくなるのもわかる。
それに夢芽ちゃんはついこの前まで高校生だったんだ。怖くて当たり前だろう。
とりあえずその進撃を一時停止して、夢芽ちゃんの話の続きを待った。
「こんなに…っ、心が、震えると……思わなくてっ」
「うんうん」
「私、こんな世界、知らなかった…っ」
「うんうん」
「私、アニメのことも、ゆうきさんのことも……なんっにも知らなかった。こんなにも、圧倒されるなんて…っ!」
涙を流しながらも必死に伝えてくれた。
もっと早く知りたかった、ゆうきさんはすごい、と。
自分の演技を見て、ここまでに思ってくれる人がいるだなんて思ってもいなかった。
腕の中で泣く夢芽ちゃんを、いっそう強く抱きしめた。