第1章 プロローグ
お母さんから一人暮らしの話が出てから数日。
またダイニングテーブルで話し合いが持たれた。
「あのね、お母さんのお友達のところにお子さんがいるんだけど。そうねえ、夢芽とは少し離れてるから…お兄ちゃんってとこかしら。それで、そのお兄ちゃんが大学の近くで一人暮らししてて、もしよかったら夢芽ちゃんもそこに住んだら?ってお話くれたの。あ、ゆうきくんって言うんだけど。実は夢芽、何度か会ったことあるのよ?でも最後に夢芽と会ったのは幼稚園の頃かしら。…まあそれはいいわ。で、そこのお兄ちゃんなら安心できるなって思ったのよ。一緒に住んだら?どう?」
……いや、長い。長すぎる。
つまりお母さんの友達の子どもの家に住めと?
しかも幼稚園のときから会ったことない男の人のところで?
「はあ……」
「どう?家賃かからないし。お母さん、いいんじゃないかなって思うんだけど。」
まあでも、大学から近いならいいかな。
「うん、いいよ。そこにお世話になる。」
ほぼ会ったことないけど。
どんな家なのか知らないけど。
こうして私は住む家を決めた。
「不安しかない…」
部屋に戻るとき、ぼそりと呟いた。