第1章 プロローグ
「夢芽、話があるの。」
唐突にお母さんが言う。
「な、なにお母さん…」
神妙な面持ちのまま、ダイニングテーブルへと促される。
椅子に座るとすぐその話は進められた。
「夢芽ももう来年から大学生でしょう?」
「うん、そうだね…」
そう、私はずっと行きたかった短大に合格し、来年から晴れて大学生になることが決まっている。
…なのになぜこんな表情なのだろう…
「夢芽、一人暮らししない?」
「……へ?」
ひ、一人暮らし??
「実はお父さんが海外転勤になるかもしれないの。お母さんね、お父さんについていこうと思って。」
「あ、そ、そうなんだ…」
急な話に頭がついていかない。
今の家から通える大学なのに……
「もし一人暮らしが不安なら、お母さんが寮とかなにか探してあげるけど。どうする?」
「あ、いや。一人で大丈夫…」
「そう!それなら今度一緒にお部屋探しに行きましょうね!」
「うん……」
私はこれからはじまる大学生活に、新たな不安を抱えるのであった。