第1章 嵐の予感
「うっわルイーザじゃん」
「なに、私がいたら不満かい――――ベル?」
右隣に腰かけてきた少年、ベルフェゴールを鼻で笑いながら足を組む。コイツは私よりも5下のクセに生意気。
……ふと右手に違和感を感じた。
ぐっと力を込めて動かそうとすると皮膚を切る感触がしてそこから血が滲み出た。
「……なめてんのかクソガキィ……」
「うっせババア」
「まだババアじゃねぇよ21だぞ21」
「王子より年上の時点でじゅーぶんババア」
「ゔおぉい……ぶん殴るぞぉ……!」
「やってみろよ」
「もう! 二人とも! ケンカはダメよ」
私とベルの間に割って入ったのはオカマだった。ベルは舌打ちして私の右腕に巻き付けたワイヤーをご自慢のナイフで切って放した。
「ルッスーリア、止めないで頂戴」
「ダメよ。せっかくカワイイのに怒ると喋り方が隊長ソックリになっちゃうんだもの」
「あら」
「血は争えねぇっての?」
「頭かちわんぞ」
「おーコワっ」
「ベルもやめなさい。ルイーザ怒らせたらヴァリアーの仕事受けてもらえなくなっちゃうのよ」