第1章 真逆〈O×S〉
~S.
結構大きめの金切り音が、院内に響いた。
音を出した原因は俺。
「あ〜…、やっちまった、」
次の手術で使う道具が、俺の足元に散らばっている
昨日のことが気になって、よく見てなかった自分
が悪いんだろうけど、これはないでしょ…、
「先生、大丈夫ですか?」
音に集まってきた看護師に心配されながら、一緒に
道具を拾い集めていく。
でもなんか…嫌な予感がするんだよね…、
ほら、何ていうの?虫の知らせだっけ?そう言うやつ、
「翔さん、大丈夫?調子悪い?」
スタッフルームにあるソファに腰掛けるとすぐに
よってくる同じ外科医である松本潤
よく一緒にいる為、セットで呼ばれる事が多い
でも彼にはもう1つの仕事がある
所謂、裏稼業の人達の手当とか、そう言うの、
「ごめん、大丈夫…、それより患者の方は?」
「そっちは大丈夫、手術出来る状態」
「なら平気、予定通りやるよ」
改めてカルテを見ながら術式に誤りがないか
チェックしていく
いつまでも落とした事を引きずってる訳にも
いかないので、目を閉じ集中する。
「あ〜、今回のも、やりがいあった〜、」
腕を伸ばしながら、手術室から出る
家族の人に、無事成功したという言葉をかけ
その場を後にする。
「翔さん!流石だね、今回も根治だよきっと」
かけてきた潤に褒められ、少し照れくさくなった
が、素直に受け取る
「潤も…、中々上手になってきてるよ」
最初はあんなにびびってたのに、何て笑えば
腕をパンチされる
手術前に起きた、事なんてすっかり忘れてたけど
ふと、思い出した。
「ん〜…、結局何なんだろ、」
次の患者さんのカルテを見ながら考えるも
原因は見つからず、考えつくのは、昨日の…
傷を負った彼だ
激しく動いて傷口が開かなきゃいいけど…、
そう思いながら、コーヒーを啜る
ぱちぱちとパソコンに文字を入力しながら
仕事を進めていく
「翔さん、もう夜中だよ」
「え、もうそんな時間!?はや…、」
「今日の日直は俺だし、少しでも家で寝なよ?」
「ん、ありがとう」
お礼を言い、昨日と同じ道を通ってみる。
でも、ただ月が光ってるだけだった。
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