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COLORS【気象系BL】

第2章 八百万の神〈O×N〉


~S.




此岸へ続く、先が見えない鳥居に囲まれた階段
智くんは、降りてみたら、呪いは解ける。何て言う
「無理だよ……、そんなの」
手首に巻き付いた楔を撫で、此岸への階段を後にする。
本堂から少し離れた建物の中に入り、一つの鏡に手をかざせば
ゆらりと映し出される此岸の世界。
場所は…智くんが捕らわれている、一つの神社。
「また、人の子と会ってる…、バレたらどうすんの、」
鏡しかない空間に、俺のため息が響く。
俺らの世界じゃ、人との関わりは大事にしてるけど
愛しあったりするの何てもってのほか。
だがしかし。何年一緒居ると思ってるんだ智くん
俺には向けない、愛しいものを見てる顔に、
再び、ため息がもれる
「バレたら、どうしよ…」
胸の辺りがざわざわした。

『飛翔様、お取り込み中失礼ですが、お父上様が
お呼びです』
顔を白い布で隠した狐が少し高い声で言う
「わざわざありがと、今から行く」
煙がゆらりと出てきて、狐が消えた。
「あぁもう、何だよ……」
憂鬱な気持ちを胸にしまったまま、鏡に背を向け
憎たらしい父親の居る寺へ向かう
向かう途中で出会う妖達は、珍しい物を見る様な目で
俺を見ながら、声を揃えて言う
『飛翔様はほんと、母上様にそっくりだ』
その声に、愛想笑いで返しながら先を急ぐ

「…、本日はどの様な用で、」
重い扉の先に居座る男に聞けば、ゆっくりと目が合う
『わかっているだろう。叡智の狐についてだ』
まるで忌々しい物を見るかの様に顔を歪めながら
静かに言う
「そうですか、それで、何ですか、」
冷静に、そいつに言葉をなげる
『お前も見ただろう。捕らわれの身の癖に、人を
愛そうとしている』
ひくりと、喉の奥が詰まる感覚がした。
ひたりと、背中に汗が伝うのがわかった。
ひどい耳鳴りがなりだした。
『人の子を殺せ。わかったな』
射るような目線に、体が固まる
『出来なかったら、わかるよな』

最悪だ。
この楔さえなければよかったのに。




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