第4章 酔っぱらいのボタン
秋也の下敷きになった。
ソファの上で、秋也と有の身体が密着した。
秋也の身体の熱が全身に伝わってくる。有の心臓はドクドクと大音量で鳴り響いた。
いやだ…いやだ、いやだ。いやだいやだいやだ。
有は必死で秋也の身体を押し返した。
重い。彼の胸も、腕も重い。
「秋也くん、どけて。お願い。起きて、ねえ」
声が震えそうになるのを必死で制御し、なるべくいつも通りにふるまう。慌てたり焦ったりする姿はあまり見られたくなかった。
秋也はむにゃむにゃと、返事なんだか何なんだかわからない声を出した。
脱力しきっている。腕にはなんの力も込められていないはずだ。それなのに、逃げ出すのがこんなにも難しい。
「んん…もう、離して…!」
腕を振り上げ、身体をよじり、脚で突き飛ばすようにして、ようやくソファから脱出した。
「はぁ…はぁ…。驚いた…もう」
秋也はすぴすぴ寝息を立て始めた。
自分がこれだけ苦労しているのに、人の家に勝手に来て勝手に寝ている。
有は腹を立てたが、寝ている酔っぱらい相手ではどうしようもなかった。