第4章 酔っぱらいのボタン
1週間ほど経った土曜の夜、有は部屋でレポートを書いていた。
ふと、玄関の方をみる。外で物音がしたような気がした。
いや、気のせいではない、ドンドンとドアを叩くような音がする。
立ち上がって、恐る恐る戸口に近づいた。
「有…んん〜〜……あけてくれぇ〜〜〜〜…」
秋也の声だ。
驚いて玄関扉の覗き穴に目を当てる。
外にいるのは確かに秋也だった。
有は慌てて扉を開けた。
「秋也くん、どうしたの…!」
「あ〜…有…」
秋也は半ば倒れるようにして有に覆いかぶさった。扉が重い音を立てて閉まる。
「ちょ、きゃあ!や…!重…秋也くん!」
酒の匂いがする。
「秋也くん、飲んでるの?」
そういえば週末は飲み会があるとか言っていたような気がする。盛大に酔っぱらった秋也は、勢いに任せて有の家に来た、ということか。
合点のいった有は、呆れながらも話しかけた。
「ねえ、重いよ。歩ける?ねえ」
「ん〜…」
ごにゃごにゃとわからない言葉を口にして、フラつきながら秋也はリビングに向かった。
転んではいけないので、有も一応脇から支える。
これだけ酔っていては自宅へ帰すのは難しそうだ。けれど彼と一晩過ごして、万一襲われでもしたらどうしよう。
そんなことを悩みながらリビングのソファの前まで来ると、秋也はドウッとその上に倒れ込んだ。有も身体をつかまれ、一緒に引きずり込まれる。
「ひっ…あ!」