第3章 裁縫箱
蜜壷の入り口を、バイブでくにくに押してみる。弾力のある肉壁が軽く反発する。
有はンッと口を引き結び、バイブを強く押し込んだ。
ぬぷぬぷと飲み込まれて行く。
グリ、と、奥まで入りきった感触がした。ふうと息をつく。
ゆるやかに出し入れを開始した。己の肉壁がバイブをぎゅうぎゅうに締め付けて、動かしにくいが、擦れて気持ちいい。
「ん…ん。ふぅん…」
抑えられた声が、喉の奥で震えている。
このマンションの壁は決して薄くはないが、有は絶対に声を出そうとしなかった。
恥ずかしい声をあげるのも、自分の声を聞くのも嫌いだった。
気持ちいいのは好きだ。でも気持ちよさに我を忘れるというのは、有には怖いことだったのだ。
人目を気にして、相手の感情の先読みをして、計算高く、いい人の仮面をかぶる。そんな有にとって、本能のままに喘ぐというのは、己を見失うようで恐怖だった。
それなのに自慰行為を趣味としているのは、心のどこかで葛藤を抱えた結果だったのかもしれない。
くちゃくちゃとバイブを動かし続けると、きゅんと奥が熱くなってきた。
すごく気持ちいい。どんどんよくなって来ている。もっと。
有はバイブのスイッチを入れた。機械音とともに、バイブが有の中でうねりだす。
「ふ…うぅ」
快感に顔をゆがめた。
激しく手を動かすと、機械音に負けじと水音が響く。ぐぽぐぽいう音が、卑猥に部屋に響いた。
思い切り手を伸ばし、バイブが一番いい所に当たるように動かす。
疲れを知らないバイブは、何度も何度も有の弱い所をいじめ続けた。
気持ちよさで目尻に涙がにじむ。快楽に脚がジタバタ震えた。
「んっ…ん、うん……ひっ、ん…」
有の腰はバイブに応えるようにいやらしく動く。
胸のまるいふくらみが、それに合わせてゆさゆさ揺れた。