第3章 裁縫箱
有はまたため息をつく。
中学1年生のとき、初めてできた彼氏には「いい子だと思ってたのに、何考えてるかわかんない」と言ってフラれた。
「中学の頃は私もまだまだだったなあ。あんな男に見抜かれるなんて、ひどい話だよ。もっと上手くやらなきゃ。演技なんてバレたら終わり。優しくて、従順で、気のつくいい子。私ならできる。私なら最高の"彼女"ができる。そうよ、がんばって。がんばるの。勝ち組の人生のために」
有はスマホを投げ出すと、寝室へ向かった。
クローゼットの扉を開け、奥の方から大きめの四角い箱を取り出す。
パっと見では、裁縫箱に見えるようにカモフラージュしてある。
これが彼女の1番の秘密だ。
カパリと蓋を開けた。
ローター
バイブ
ディルド
電マ
ローション
コンドーム
色も形も様々なラブグッズが箱を埋め尽くしていた。
有はぺろりと舌で唇を舐め、クリトリスが同時に責められるタイプのバイブと、温感ローション、コンドームを取り出した。
己を偽って暮らすストレスを発散させるためなのか、毎夜の自慰行為だけが有の唯一の趣味だった。