第4章 和平交渉
暗雲は遠退き日が窓からこちらを照らす。朝だ。朝まで看病したか甲斐もあり憂城の顔から険は消え安らかでそうであった。ちゃんと息している。鼓動も聞こえる。昇天してなくて良かった。我ながら恐ろしいことをしでかしたと焦ったが息してたら大丈夫、大丈夫。
「あの時とは逆だな憂城」
君と別れる寸前は私が意識を喪失しそんな私を君は見下ろしていた。
だが君と会うと決めたがいざとなると何から話そうか?元気か?→ではなかったな。あの後、何をしていた?→踏みいった話はしない主義だ。それに彼は戦士なのだから想像つくだろう。いい天気ですね。→今はな。ご趣味はなんですか?→友達作りだろう。それで喧嘩中だ。私の今まで→話したくない。えー、他は、他は、
「成せば成る」
考えるのぶっちゃけ面倒くさいとかじゃないですよ。うん。行き当たりバッタリなのはいつもの事だ。彼が目が覚めれば会話も何かしら生まれるだろう。
もぞりと動く気配がある。彼の目覚めは近いようであった。
「…」
「憂城」
「…、?」
「ああ、私だ」
今回は寝言ではない。視点の焦点が定まって私の視線と彼の視線が交わる。
「おはよう。体の調子わっ!」
言葉は遮られた彼がベットから飛び出し私をフローリングの床に押し倒し強く抱きついてきたからだ。どうやら本調子ではないが少しは戻っているようだな。
「憂城?」
「…」
彼は答えなかった。彼の顔は見えない。何を思っているか理解に及ばない。ただ強く私を抱き締めるだけだった。ミシミシと体が悲鳴を上げているが死体なので問題ない。肋骨が今バキって鳴ったけどね!死体だからね!再会早々、圧殺か。私達らしい再会とは言えばそうなのか?
「まぁ、それはいいのだが憂城」
とりあえず服を着たまえ。君は今、全裸だって知ってる?風邪ぶり返すぞ。
「…」
返事はなかった。