第4章 和平交渉
憂城は頬は火照らせ息苦しそうに咳込みベットに伏している。
彼が眼前に現れた時でさえ度肝が抜かれたが更に彼が私の方へ倒れた時の衝撃は物理的にも精神的にも多大なダメージを与えたものだ。私より頭一つ半と高く鍛え抜かれた体躯は重く濡れた衣服を脱がしベットに運ぶのも一苦労であった。私は死人だかリミッターが外れてる訳ではないのだ。
「少し痩せたな」
前回より儚げな様相な彼は苦しげに呻く。彼はこの数日、どのように過ごしていたのか気にかかるし一体全体、どうここを突き止めたか疑問は尽きないがそれは後回しだろう。流石に重篤な彼を置いて町から離れる事等できない。嘘から出た真ではないが断罪兄に宣言した通りになりそうである。
「…」
譫言のように彼は呟いた。
「大丈夫か?寒いならケットを持ってくるが」
「…」
寝言か。懸念は多々あるがまずは苦しむ彼をどうにかせねばな。生憎と風邪に縁がない私では風邪薬など。テーブルの上の小瓶が目に入る。努突直伝漢方薬。試すか?安全性は断罪弟が体を張って証明してくれたものの脳裏に痙攣して泡を吹く断罪弟が過る。背に腹は代えられないだろう。
即決しコップに水を注ぎ小瓶を手にするが。
「どう飲ますか」
憂城は瞳を固く閉じ呻吟している。とても飲める状態とは言えなかった。
やむを得ないか。
私は水と漢方薬の粉末を口に含み憂城の唇を塞ぎ少しずつ口の中に流し込んだ。
「…ふっ、んぐっ」
「よし、飲んだな。いい子だ」
嚥下するのを見届け頭を撫でる。これで大丈夫だろう。多分。憂城が少し痙攣したような気がしたが私は見て見ぬふりをして額に乗せていたタオルを冷やし直すために洗い場に向かった。