第4章 和平交渉
常に彼等に抱くイメージは嗤っているイメージであった。金と言う即物的な物のために私を利用し金に代えてきた。しかし、私は彼等を恨んでいる訳ではない(根には持っているが)。不思議なもので私は彼等にそこまでの不快感を抱けずにいるのだ。私が飛び抜けた聖人だからではない。
確かに売られたがデメリットばかりではなかったからかもしれない。私を買い取った組織は何かしら壊滅するか破産してきたのだった。壊滅しないまでも逃走経路が用意されたりと彼等に売られた後は何かと逃げやすかった。
だから不信感があっても不快感はないのだろう。
「出来れば軽薄そうな態度は改めて欲しい。アレが君のスタンスなら仕方がないが。先程言ったが私は今の君の方が、聞いているのか?」
「ファッ!?な、何だって!?お、おれ、おお、俺様がががっ!」
「大丈夫か?挙動不審が加速しているが」
「うっるせぇ!だっ誰のせいだと!」
顔を真っ赤にして彼は憤慨していた。
「すっ好きとか!お前、くそっ!どうせ意味がちげぇだろうが!お前、簡単に好きとか言ってんじゃねぇぞ!勘違いしたらどう責任取ってくれるんだ?あぁ゛?勘違するぞゴルァ!」
「勘違い?君は何の話をしているんだ」
目を血走らせながら凄む断罪兄はやはり不審であった。
「好きに勘違いなど無いだろう。好き(LIKE)は好き(LIKE)だ。それ以上に何があると言うのだ。君はおかしな事を言うな」
「…お前ってそういう奴だよなー。俺様知ってたー」
憤慨したかと思えば目から生気を消し意気消沈する。コロコロと表情を変える断罪兄の姿にやはり戸惑う。だが嫌ではなかった。どちからと言えば新鮮で好ましい部類だ。こちらが良いな。こちらの彼の方が良い友好関係が築けそうだ。
視野狭窄と言わざる終えないだろう。彼等との付き合いは長い筈なのに新しい一面を今さら知るなぞ。どれだけ私は人を見ていなかったんだろう。これも全部、憂城のお陰かもしれない。彼に出会わなければ、見る努力を怠り続ける所だった。だからこれからは人との繋がりを大切に、
本当にそれでいいのか?
すれ違いざまに誰かが言った気がした。
「…!」
「おい、どうかしたか?」
「いや、」
背後を振り向くがただ街灯の光と雨が降り注ぐ通りがあるだけであった。幻聴か?不安なんだろうか、誰かと親しくなるのが。知らずと深い溜め息が出るのだった。
