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友達のナリカタ【十二大戦】

第4章 和平交渉


シチューの安全性と効能を訴えた上で私は改めて断罪兄に向き直りシチューを盛った皿を差し出す。

「食うか?」
「食わねぇよ!」
「…そうか、残念だ」

彼が気絶したら心置きなく帰れたのだが。いや、どちらにしろ帰るが。

「このような副作用があるとは知らず君の弟には申し訳ないことをしたな。だが料理は作り終えた。私はこれで失礼させてもらうぞ」
「か、帰るのか」
「やることはやったからな。味の感想を聞けないのは残念だが…もしややはり君は私を売り飛ばす気でここに留めようと」
「だから売らねぇって言ってんだろうが!お前は俺様を何だと思ってんだよっ!」

えっ、それは。

「いや、言うな。立ち直れなくなる」

断罪兄は力なく項垂れ言った。私は先程から挙動が不審な断罪兄から視線を外しガラス張りの窓から外を見る。時間は10時を回ろうとしており外は町だけが明るくいつの間にか空は暗雲に覆われており少々強めの雨が降っているようであった。傘の手持ちはない。濡れてしまうが死人故に風邪の心配はないので問題はないだろう。

「ではな」
「おい、待て」
「何だ?まだなにか、」
「送ってやる」
「は?」
「送ってやるって言ってるんだ!俺様が!」

語気荒げに言い放つと私の腕を強引に掴み玄関に向かう断罪兄。あれよあれよとエレベーターに乗せられエントラスンに着き受付のスタッフから傘を受け取った彼は傘を開いて私を中に入いれ外に連れ出す。

彼の対応にただただ反応に困り果てる。私の知る彼らしくない。私の知る彼はもっと軽薄で酷薄な子だった筈なのだ。こんな良心的な振る舞い。

もう認めるべきか、今回の彼等に裏はないと。

冷静に今日の彼の行動を思い返す。日頃はアレだが今日の行いは決して悪行と呼べるものではなかった(弟は変わらず悪どかったが)。そう考えると私は大人気なかったと猛省すべきかもしれない。彼等にも献身な心があるのだ。そう言えば彼等は義賊としても名高かったような。

私の歩幅に合わせ歩く断罪兄の顔を眺める。彼はどこか気まずそうに遠くを見つめていたが此方に気づいて。

「何だよ」
「いや、」

ただ、

「私は今までの君より今の君が好きだと思っていたところだ」
「、はっ」

意表を突かれたような表情で彼は固まった。
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