第4章 和平交渉
彼等がいるとは、暮らしやすい発言は撤回せねばなるまい。この町、ダメかもしれない。特に私がヤバイ。一悶着は覚悟すべきだろう。
「それで次はどこの組織に私を売り飛ばす気だ?」
「おいおい、俺様達の事なんだと思ってんだよ。ここに来たのはたまたまだ」
「そーだぜぇ。俺達もお前が居るなんて知らなかったっつーの!偶然だよ。グーゼン」
信用に欠けるが嘘を言っている様子は見られない。本当に偶然、なのだろう。と判断しておこう。私が警戒しているのを知ってか知らずか断罪弟が目敏く買い物を袋の中身を覗く。
「てかお前なーに持ってんだよ?食い物か?お前、物食わねぇだろ」
「料理を趣味にしようと思ってな。君の言う通り私は食さ無いが」
「お、男かっ」
突然、固い声が食い気味に呟かれる。断罪兄だ。心なしか顔色も悪く少し震えているようであった。切羽詰まった彼は私に迫る。
「男が出来たのかっ」
「いや、そう言うわけではないが…いきなりどうした?」
急激な断罪兄の豹変に困惑しつい断罪弟を視線を向ける。断罪弟はニヤニヤと含んだ笑みを浮かべ
「そりゃあ、お前、うちの兄貴はお前が、ぶへらっ!」
言葉が最後まで続くことはなかった。断罪兄が顔面を殴り飛ばしたからである。
「ってーな!何しやがんだ!クソ兄貴!」
「黙れ愚弟が!」
「俺が折角、情けねぇ兄貴の代わりによぉ!」
「余計なお世話だボケェ!」
町中、道のど真ん中でぎゃあぎゃあと取っ組み合いの喧嘩を始める双子。道行く人々が怪訝な顔で通りすぎていく。何故喧嘩をしているか知らんが好機だと私はみなす。この隙に離脱するとしよう。
「「おい、待てやゴルァ」」
そろりと離れようとすると顳顬に血管を浮かべた断罪兄弟か驚きのコンビネーションで両肩を捕らえ行く手を遮る。そのまま逃がして欲しかったのだがそうは問屋が下ろさなかったようだ。本当に私は平和が遠いらしいと身に染みて思うのであった。