第3章 異文化交流:後半戦
「ずぅーとぉ、君を待ってたんだぁー」
何時もより高揚的な声だった。場に酔っている。血に酔っている。彼が纏う迷彩柄の戦闘服は鮮血に塗れ両手に携えた彼の獲物も同様である。立ち止まったにも関わらず追手の追撃はない。つまり、そう言うことだ。仮想敵、外敵など最初から存在していなかった。
「一応、何の真似だと。君を問いただせばいいのか私は?」
「僕、考えたんだぁ。考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えてぇ、でも駄目でぇ。こんなこと初めで僕はどうすれば良いかわからなくなって。それで思い付いたんだよ!僕一人じゃダメなら皆に手伝って貰えば良いんだって!紹介するね。みーんな、僕のお友達なんだぁ」
鉈を持つ両手を大仰に広げると一人、一人と樹木の影から現れる。顔色が土色に変色し生命を感じさせない人だったモノ達。これが噂に聞く死体作り『ネクロマンチスト』で製作された歩く死体『ウォーキングデッド』か。私は意思ある死体『リビングデッド』とでも改名しうかな。歩く死体など彼らのための名称だろう。
など、ふざけた事を考えている場合ではないか。
全員の服装は覚えがあった。反乱軍が着用していた物だ。ならばもう、彼が何処に出掛けていたなど聞くまでもないだろう。そして、これから行われるであろう行為も聞く必要もない。だが一つだけ確認しておきたいことがあった。
「憂城、私は君に聞かねばならない事がある。君は私を殺す為だけに彼等を殺したのか?」
「うん、そうだよぉ。珍しい属性を持った人がいるって聞いたからぁ。おいで」
呼び掛けに応じて死体の群れが割れ一人の男がゆったりとした足取りで前に出て月光に晒される。昆虫の様に顎が縦に切り裂かれていたが男は平然と佇んでいた。死んでいるのだ。言うまでもなく。感情のない赤い眼光が此方に向けられる。
天を仰ぐ。そうか、そうなのだな。
「じゃあ、今度こそちゃんと殺してあげるね」
各々が武器を構え指にかけたトリガーを引く。私の意識はそこで一旦切れる。