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友達のナリカタ【十二大戦】

第3章 異文化交流:後半戦


死人は夢を見ない。まず睡眠を必要としないからだ。だが意識は失う。理由は頭部の破損だ。頭が吹き飛ぶと意識がなくなる。その時だけ私は本物の死体になれる。つかの間だがな。

だからこれは夢ではなく。過去の出来事。

無数の手が私に伸ばされる。皆、私の■■を欲しがった。その為に罪の無い人々が■んだ。皆、私の■■を奪いたかった。その為に無関係な人々が■んだ。皆、私の■■を崇めた。その為に多くの人々が■んだ。欲望が願望が熱望が希望が野望が衆望が羨望が渇望が切望が、人が人が人が人が人が人が人が人が。生きた人が■んだ。

私は無力であった。止める力など無かった。私は眺めることしか出来なかった。皆、私の中身に手を伸ばし何の成果得られず自滅し破滅し壊滅し、狂って滅んだ。

何故だ。何故、死んでいるのだ。終わっているのだ。だが私には意思があった。皆、大きな矛盾を孕んだ己に何かしらの可能性を見出だし手を伸ばし続ける。悪も善も中庸も、

「結局、こうなるのかっ」

意識を取り戻した時、日は高く上っていた。長い間、殺され続けられていたらしい。自身の体を確認する服は着替えさせたのか新しく変わっている。と言っても憂城が着ていたであろう戦闘服の上着だけだったが。そして持ち主の憂城は此方を見下ろしている。

「ダメだったね」

上体を起こした私が私なのを確認して酷く残念そうに呟いた。ふつりふつりと沸き上がる感情がある。別に私が私であるのを残念がるのは一向に構わない。立ち上がり憂城に近づき

乾いた音が響く。

抑えられない感情のまま私は憂城の頬を打った。憂城は一瞬、何が起こったか理解できない呆けた顔をして私を見る。

「君の顔なんてもう、見たくない」

吐き捨てるように言葉を残し私は彼から背を向け歩く。価値観の違いは知っていた。彼と私の物差しは余りには違うと理解していた。だが私は、それでも、もしかしたら、と。何故、何故、何故、グツグツ腹の中が燃え滾る。怒りだった。

今回も私とは無関係な人が命を取り零した。
そして私は通常通り在り続けている。

その事実が頭を駆け巡る。何度目だ。何度、同じことを繰り返せば良い。私は、私は。歩を進め続けるが憂城が私を追ってくる気配はなかった。

私と彼の異文化交流は失敗に終わったのだった。
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