第13章 有栖と白ウサギ
未だに微妙な空気が流れる馬車に揺られながら、僕は正面に座る人に声を掛ける。
『…フェンリル、奴らは、僕のことを"森の中で聞いた話"と言っていたんだ』
「……森の…中?」
『ああ。多分、身体が入れ替わった日に森でロキと少し話をしたんだ。能力のことは話さなかったけど、僕とエルが入れ替わったという話をしたから、もしかしたら、それを聞いたのかもしれない』
「…そうか」
フェンリルは険しい顔をしながらも、どこかほっとした様子だった。
その時、あることに気が付いた僕は慎重に尋ねる。
『…幹部のみんなを、疑ってた?』
彼はその言葉にぴくりと反応した後、静かに言った。
「……そんなことあるわけねーって思ってても、それしか考えられなかったんだ…でも、良かった…。
今回のことで信用なくなったかもしれねーけど……動物達だけじゃなくて、俺らのことも信頼してもらえるように頑張るから。ゆっくりで良いから、俺らのことも知っていってほしいんだ。
もう、誰にも傷つけさせねえ。黒の軍みんなでお前を守るって約束する」
『…ああ。ありがとう。
…でも、どうして動物達の話が出るん………』
"…動物は嘘を吐かないから信用できる"
『…っ!』
そこまで言いかけて、昨日の夜の自分の呟きを思い出した。
「…悪い、花壇直してたら聞こえちまって…。」
『…っ…いや、僕の方こそ、みんなが歓迎してくれたのに疑って…酷いよな、ごめん』
「いや、すぐに信じるなんて無理なんだから、謝るようなことじゃねえよ。だから、お前は上向いて笑ってろ。な?」
『…ありがとう』
一変してどこか落ち着いた雰囲気になった馬車で、僕は夕日に照らされて紅く染まる街並みを眺めていた________
(あれ?何か忘れているような………)
『……あ!チャツネとの約束!』