第13章 有栖と白ウサギ
いきなり大きな声を出した僕にビクッとしたフェンリルは何かを思い出すように目線を斜めに上げながら応える。
「あー、そういや明日の夕方とかって言ってたな」
『…っそこも聞いてたのか!??』
恥ずかしい、と言って顔を覆った僕に、ごめん、と両手を合わせて謝った後、最初は随分デカい独り言だと思ってびっくりした、なんてことを言うから、もう、聞かれたことなんてどうでも良くなってしまって、いつの間にか僕は笑っていた。
「そうだ、今度、うちのシュシュとも遊んでやってくんねー?
あいつ、喜ぶと思うから」
『ああ、もちろんだよ』
「サンキュ!!俺、1回でいいからシュシュと話してみたかったんだよなー!楽しみだ!!」
西日に照らされたフェンリルの笑顔が眩しくて、僕は目を細めて笑みを返した。
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兵舎に着いて、ここまで引っ張ってくれた馬に礼を言う。
そして、昨日の夜にチャツネと話したベンチに向かって走り出した。
5歩程前に進んでから、はっと後ろを振り向く。
『フェンリル!今日1日、本当にありがとう!楽しかった!
これ、大事にするから!!』
普段はあまり出さない大きめの声でそう言って、グローブを見せるように両手の平をフェンリルに向ける。
『おう!俺の方こそ、ありがとな!転ぶなよー!』
返事をする代わりに片手で軽く手を振って再び走り出す。
『…っはぁ、はぁ…っごめん、チャツネ…!遅れ…っ!!』
息を切らしながらベンチに辿り着き、謝りながら下がっていた顎を上げると、そこには既にチャツネを抱えた先客がいた。
「おかえり、お嬢ちゃん
もう、チャツネと話してたのか」
『…シリウスさんっ!?…ただいま…帰りました……』
驚きと恥ずかしさで声の大きさが尻すぼみになってしまった。
シリウスさんはそんなのも気にせず、自分の隣をぽんぽんと叩く。
そして、隣に座らされた僕は、2人と1匹での会話をすることになるのだった。
シリウスさんもチャツネも、お互いの意思疎通ができることをとても嬉しく思っていることがよく伝わってきた。
そんな飼い主とペットの様子を見るのはとても楽しかったし、役に立てて嬉しかったが、
少しだけ寂しい気がしたのは…きっと気のせいだ。