第13章 有栖と白ウサギ
話しているうちに、事の深刻さを自分に言い聞かせているような気持ちになり、一度下がり始めた視線は話し終えた時には机の上で握られた自分の手で止まり、氷のように動かなかった。
「…顔を上げてごらん、有栖」
固く握られた手にそっと手を添えられ、上から声が降ってきた。ゆっくり顔を上げて、少しだけ目を合わせる。
「そんなに思い悩む必要はないよ。
君は黒の軍の所で安心して彼女を待てば良い、それだけだ。彼らは必ず君を守ってくれる。
…それに、僕に思い当たることがあるんだ」
僕が口を開くより先に、ブランさんは人差し指を立てて、でも、と付け加えた。
「この短い間にいろいろあって疲れただろうし、今日は帰ってゆっくり休んだ方がいい。
僕も確実な情報を提供できるように もう一度調べておくから、また日を改めてここにおいで
…このことを忘れろというのは難しいかもしれないけど、君にはクレイドルの生活を楽しんで、笑っていてほしいんだ、君の笑顔はどんな宝石も適わない程の輝きを持つからね」
そう言ってぱちんと片目を瞬かせ、僕はそれにつられるように固くなった身体を緩ませた。