第13章 有栖と白ウサギ
「……っ!!……か!??…おい!有栖!!」
両肩を掴まれて揺すられた僕は、定まっていなかった視線をバイオレットの瞳に合わせる。
『……っああ、フェンリルか…、大丈夫だよ。何もされてないから』
「…良かった…。
ごめん。俺が油断したせいだ」
『いや、フェンリルのせいじゃない。完全に僕の不注意だった。
だから、そんな苦しそうな顔をしなくていいよ』
目の前の瞳は心なしか揺れているような気がした。
僕は上手く頭が回らないまま手を伸ばして、その奥に触れるようにそっとフェンリルの頬を撫でる。
彼は目元をふっと緩ませると、僕の身体を引き寄せた。微かに聞こえた彼の胸を打つ音が、抱き締められているという事実を僕に告げる。
『…あの…フェンリル……?』
「……っ!ごめん!安心したらつい…!」
僕の声にぱっと身体を離し、目を逸らした頬は少し染まっているように見えた。
その後、フェンリルは駆けつけた見回りの兵に魔法学者達を捕らえるように指示を出し、僕達は停めてあった馬車へと向かった。
僕は、抱き締められたことよりも、急に現れた魔法学者と弾けなかった魔法のことが頭から離れなかった。
ちらりとフェンリルの顔を見ると、眉間に皺を寄せて何かを考えている様子だった。
馬車に乗って、ルカのお手製サンドイッチを食べながら本来の目的である彼らの家への道を辿る。
これと言った会話もないまま馬車は停まり、家の前に立ち、扉を叩いた。約束の時間ぴったりだ。
『ブランさん、エルです。こんにちは!』