第13章 有栖と白ウサギ
「家族は…」
1人だけ、という言葉に引っかかったのか、家族、と口にしたフェンリルは、思わず言ってしまったという様子だった。
『いないよ。僕は1人っ子だし、両親は19の時に死んだからね』
僕があっさりとそんなことを言ったからか、フェンリルは目を見開いて少し息を飲んだ。
「……っ!!ごめん、嫌なこと聞いたな…」
『いや、いいんだ。もう何年も前の話だしね』
「何年も前って……そういや、有栖って何歳なんだ?」
『多分、エルちゃんと同い年だよ
彼女の部屋に飾ってあったバースデーカードはフェンリル達が送ったものなんだろう?』
「ああ、多分そうだと思う
……あのさ、お前のこともっと知りたいし、いろいろ教えてくれよ!得意なこととか苦手なもんとか、趣味とかさ!」
声色を明るくし、そう切り出したフェンリルの心遣いに僕は頬を緩ませた。
『……うーん…そうだな…
得意なことは乗馬と絵画、趣味は綺麗なものを見たり触れたりすることで、苦手なことは…料理…、できないのは、女の子らしい格好…かな』
「へえ!馬に乗れんのか、すげえな!」
素直に相槌を打つ彼の様子を見て僕は続ける。
『ふふ、ありがとう
…あと、趣味からきた癖なのかもしれないんだけど、綺麗なものや人を見ると、つい触ってしまうんだよ…、普段はグローブをしているから心配いらないんだけど…。
……フェンリル、あの時はごめん』
その言葉の意味するところに気付いた瞬間、フェンリルは耳を真っ赤にしてぶんぶんと手を振った。
「…っああ、あれな!!っ大丈夫大丈夫!気にすんな!」
そして、話題を変えようと少し考えた後、にかっと笑って僕の手元を指さした。
「そうだ!あいつらのうちに行く前にグローブ買って行こうぜ!いつまでもシリウスのを付けてらんないだろ?」
『でも、お金なんか持ってないし…』
「そこら辺は気にすんな!俺からのプレゼントにするから!な?」
『…ありがとう、フェンリル』
「…っ!…なに、このくらい いいって!」
彼がまた赤くなった理由が分からなかったが、ちょうど街に到着したため、僕達は一度馬車を降りて買い物へと向かった。