第12章 麻里と有栖
当たり障りのない会話と態度。崩すことのない微笑み。
それはいつしか、偽りの僕ではなく、本物の僕になっていた。
元々 僕っ子で 背も高く、容姿が女性らしくない上に そんな様子だったからか、男に間違われることも多く、"紳士"だなんて言われているのを聞いたことがある。
そんな僕に好意を持ってくれる人は沢山いた。
その人達は僕との深い関係を求めていたが、それを許すことは絶対にない。
そう思っていた。
"「有栖は何も…何も悪くないじゃない」"
今まで必死に守ってきた線を飛び越えて、剥き出しになった僕の心を抱きしめたのが麻里だった。
絶対的な存在の両親がいない僕にとって、そんな人の登場は戸惑いでしかなかったが、それ以上に、僕のことを知ってもなお、今まで通りに接してくれることが嬉しかった。
『……ごめん、麻里…』
そう呟いた後、今日の出来事を思い出す。
自分勝手なことは分かっている。だが、今の状況を信じ切ることはできなかった。
もしかしたらこれを利用しようとする人がいるかもしれない、そう思うと、あの場で自分の能力のことを告白しまったことへの後悔や恐怖が僕の心を覆った。
黒の軍、いや、この世界のほとんどの人は、心底優しくて暖かいということは知っているつもりだ。だからこそ、それを信じ切ってしまうことがとてつもなく怖かった。
アモンの顔や自分の過去がちらりと頭を過ぎり、ぶるっと身震いをする。
その時、ガサガサッと音を立てて揺れた茂みから僕目掛けて飛び出てきたのは_____