第11章 有栖と黒の軍②
『え………』
何が起きているのか、全く把握できなかった。
目の前には、賑やかに飾り付けられた部屋、バイキング形式で並べられた色どりの良い料理、そして、笑顔で僕を見つめる黒の軍の人々がいた。
驚きすぎたせいなのか、ここまでの緊張は嘘だったかのように無くなって、ふわふわと沸き立つ得体の知れない感情が全身を駆け巡る。
気付くと、熱くなった目元から一筋流れたものが僕の頬を濡らしていた。
「やだっ!!驚かせちゃったかしら!!?
泣かないでー!アリスちゃーんっ!!」
「おいおっさん、ここに来る前にこいつに何かしただろ!?」
「……有栖、驚かせちゃった?…ごめん」
「何も怖くないから、な?泣くな」
セスさん、フェンリル、ルカ、フェンリルが焦ったように僕の周りに集まって来て、僕の頭を撫でたり、顔を覗き込んだり、抱き着いたり、手を握ったりしている。
『皆さん…本当にありがとうございます…。"僕"、こんな風に歓迎してもらえるだなんて、思っていなくて…』
その場にいた軍人達は皆、僕の言葉を聞いた瞬間、驚いた表情をして固まった。
僕は、その反応の意味することにすぐに気付いた。
「あー…。ぼk…私は、小さい頃から自分のことを"僕"と呼んでいるんです…。驚きましたよね、すみません……。
ぼ…私、と言うように気を付けま………っうわ!?」
全て言い終える前に、セスさんにぎゅっと抱き締められた。
「…っそんなこと気にしなくていいのよっ!?
アリスちゃんはアリスちゃんのままで居てくれた方が私達は嬉しいわ!ねえ?」
そう言ったセスさんは何故か涙ぐんでいて、周りの人達も微笑んで頷いてくれていた。
『…っありがとう…っございますっ…』
再び涙が頬を伝う感覚に、自分はこんなにも涙腺が緩かっただろうかと思いつつ、その場にいたみなさんに向けて感謝の気持ちを伝えた。
何故か、再びその場が固まった。