第11章 有栖と黒の軍②
談話室までの道のりは5分もかからなかったはずなのに、30分くらい歩いていたような気がする。
足取り重く歩いていると、そうだ、というようにシリウスさんが立ち止まり、それに合わせて僕も立ち止まる。
「これ、俺のだから大きいとは思うが、付けておいた方が良いだろう」
そう言って、いつも付けている黒い革のグローブを僕に差し出す。
『え…、でも…』
「いいから、思いもしないところで”読んじまう”のは辛いだろう」
『…っそうですね、ありがとうございます…』
受け取ったグローブは微かに体温が残っていて、予想通りブカブカだったが、僕は顔が綻んでしまうのを抑えられなかった。というより、緩んでいることに気が付いていなかった。
そんな僕の顔を見たシリウスさんが少し頬を染めて 苦い物を噛んだような表情をしていたことは、知るはずも無かった。
そして、目的の場所に着き、ドアノブに手をかける。
深く息をつく。
「大丈夫だ、俺がついてる」
添えられた大きな手に、ブカブカのグローブに、背中を押されるようにドアノブを握った手を捻る。
開くと、そこには___。
「「「「有栖(ちゃん)、いらっしゃーーい!!」」」」
満面の笑みで僕の名を呼ぶ”彼ら”がいた。