第11章 有栖と黒の軍②
意を決して踏み込んだものの、兵舎の中は異様な程に静かで、僕とシリウスさんは顔を見合わせた。
「…俺が見回ってくる。
お嬢ちゃんはとりあえず、あんたの部屋に付いてるシャワー室で綺麗にしてその服を着替えておきな。後で迎えにいく」
『分かりまし……
…え、シャワールームが付いているんですか』
「気付かなかったか?簡易的だが、身体を綺麗にするには充分なはずだ」
『……そうでしたか…』
(なぜ僕は気が付かなかったんだ…
昨日、ちゃんと顔も洗いたかったし、歯磨きもしたかったし、それに、シャワールームがあるってことはトイレもあるんだよな…
僕が変な嘘をついてまで必死に見取り図を見せてもらおうとした意味がないじゃないか…)
冷静でいたつもりでも、実際は頭が混乱していたようだ。
昨日の自分の行動を思い返して、再び 暗い雲が僕の心を覆いかけた。
「何しょんぼりした顔してんだ、
ほら、綺麗にすればすっきりするから」
俯きかけた僕のおでこを指先でつついたシリウスさんは、屈んで僕に目線の高さを合わせて微笑んだ。それだけで僕の心が少しだけ晴れたことに気付き、自分の単純さにため息をつきそうになるのだった。